Janis rules, man! (Festival Express)
イギリスかぶれの私が、思わずこう叫びたくなってしまうくらい、ジャニスは圧倒的だった。映画『Festival Express』を観たときの話だ。口を開けば「~~, man.」と言いまくるジャニス。Texanアクセントも彼女がしゃべれば最高にかっこよかった。
『Festival Express』
ボブ・スミートン監督(『The Beatles Anthology』),2003年,イギリス=オランダ
シネセゾン渋谷にて。
A Scene from "Festival Express"
ウッドストックの翌年、1970年。ジャニスが死ぬ2ヶ月前。彼女を含め、The Band, Grateful Dead, Buddy Guyといった70年代の音楽史を代表するミュージシャンたちを乗せた貸切電車が、カナダを横断しながら昼も夜もノンストップのジャム&パーティーを繰り広げた。彼らは途中いくつかの場所で電車を降りてミュージック・フェスを行い、そしてまた電車に乗り込む。“We are happy until we stop.” それがFestival Expressだ。
ここに出てくる特定のミュージシャンのファンでなくても、電車の中で皆がいかにも楽しそうに酔っ払ってジャムっている姿は見ているだけで嬉しくなる。The Bandのリックなんかベロベロに酔っている上に、あまりに嬉しすぎて『ギルバート・グレイプ』でレオナルド・ディカプリオが演じた、ちょっと体の不自由な男の子みたいになっている。ほほえましいくらいに素直で無防備で幸せな瞬間。今はもう夢みたいなその瞬間に立ち会えたような、そんな幸せな錯覚をおこした。
この映画を見る前から、ジャニス・ジョプリンのことは60-70sには欠かせない存在として知識としては頭に入っていた。でも自分で聴こうと思って聴いたことはなかったし、心から感動したこともなかった。でも“Cry”の出だしの泣き声みたいな、しかし体の奥底からしぼり出すような力あふれるシャウトが、充分余韻を引いてから一気にはじけたとき、もう、ただただその力強さと繊細さを併せもった声の力に圧倒された。ジャニスは、パワフルで力強くてかっこよく、時には無邪気で本当にかわいらしく、歌う喜びや楽しさに溢れている。同時に、生きている中で感じてきた悲しさや寂しさもまた、彼女の力になっている。歌うことで息をし、命を輝かせているような彼女の姿は鮮烈だった。
ジャニス以外のミュージシャンたちも、もちろんすごい。特にThe Bandの名曲“The Weight”は文句なしに感動的だ。Buddy Guyだって若さにあふれていてエネルギッシュ。(Grateful Deadはちょっと退屈だったけど。)今の私から見ると「この振り付けは本気でやっているのか?」と、かなり笑えるバンドもある。しかし、ジャニスが出てくるとみんなかすんでしまう。この映画は私のジャニスとの出会いとなったから、それだけ彼女の印象が強いということはあるだろう。でもジャニスが “Cry” や “Tell Mama” で見せる圧倒的なパワーと、彼女の歌中のけなげな語りかけには誰もかなわなかった。
映画『Festival Express』のオフィシャルサイト。英語版のほうが映像が多い:
http://www.festivalexpress.com/
日本語版はこちら:
http://www.festivalexpress.jp/
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