Le Chat Blanc par Bonnard (ボナールの白猫)
Le Chat Blanc (White Cat) [1894]
気持ちよく、伸びたいだけ伸びている、この満足気な猫。自分の在り方がこんなにも自然で気持ちよく感じられてしまう、こんな幸せそうな瞬間ったらない。きっと散歩にちょっと出てきたところで、今日も自分が行こうと思っている陽だまりのことなんか考えながら、新鮮な空気を胸いっぱい吸い込んでみたら、やわらかい毛によそ風がじゃれて、身体の中も外も空気と一体になったみたいで、あぁなんて気持ちがいいんだろう。思わず目を閉じて、のどを鳴らしてしまった。そんな猫。やわらかく伸びて膨らんで、猫の嬉しさがよく表れているこの絵が、私は好きだ。
このボナールの白猫の夢を見たことがある。私が緩やかな坂道を上がっていくと、道の先にゆっくりと垣根が見えてきた。その下に猫がいて、ちょうどふにゃーっと伸びをした。その様子が、このボナールの猫そっくりで、「あぁ、ボナールって写実だったんだ」と、深くうなずいた。そういう夢だった。
「ボナールは写実派です」と大真面目に言ったって、聞いてもらえるわけはない。しかし、こんな夢を見るほど、この絵は猫がもっとも猫な瞬間を、リアルに気持ちよく感じさせてくれるのである。
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