日本映画の傑作
Japanese Films
『七人の侍(Seven Samurais)』 - 黒澤明(KUROSAWA, Akira)
不屈の名作とはこういう作品のことをいうのだと、私は思う。これほどそれぞれの役者が自分の持ち味を最大限に見せることができた映画というのは、そうそうないのではないだろうか。キャラクター1人1人の味わい深さと映画としての迫力…。これを名作と言わずして、何を名作と言おう。その中でもやはり三船の魅力はすごいものがある。志村喬も本当にいい役者だ。その力をここまで引き出した黒澤という人は、やはりすごい監督だったのだなぁと思う。
『東京物語(Tokyo Story)』 - 小津安二郎(OZU, Yasujiro)
小津の『東京物語』も最高傑作のひとつだ。黒澤とはまったくタイプの違う、日本映画界の巨匠。家族というものを通して毎日の生活の中から、変わりゆく人間関係を描いた小津の作品は、強い説得力を持って心の芯に語りかけてくる。この説得力は、例えば、毎日通る道、毎日繰り返される挨拶といった、日常のディテールをひとつひとつ丁寧におうことでうまれているのだと思う。
最近自分で絵を描くときに、「絵を描くということは物を見るということ」だと実感する。絵を描こうとすることで、普段は見過ごしていたようなことにも気づくし、「へー」と新しい認識になったりすることもある。小津の映画も同じだと思う。映画を撮ることで、つまり(彼の映画の場合)改めてディテールをおって描いていくことで、もう一度日常を見つめ、考え、感じている。描く人がその物(者)と向き合って、様々な思いや考えや感情をめぐらせながら、丁寧に描いた絵が説得力をもって人を魅了するのと同じように、小津の映画は深い味わいと感動をよぶのだと思う。
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